 国民健康保険について
桐生市役所 2012年6月24日 撮影
国民皆保険というのは、日本が誇る社会保障体制であります。
国民全体が何らかの医療保険に入って、けがや疾病に対する
医療サービスについて、そのために安心して生活ができるわけです。
今この国民皆保険が
�〃鮃�保険と��国民健康保険
の２本柱によって支えられています。
しかし、今その国民皆保険が根本から揺らいでいます。
揺らいでいるのは、昔からある国保のほうです。保険制度というものを
考えますと、行政が何度も何度も強調しているように、まさに保険料収入で
支出を賄うというのが原則の制度であります。国保設立当時、もともと
戦前の話になりますけれども、1938年に社会主義的風潮が農村部に
波及するのを防ぐ社会政策的な意味もありまして、国保というのは
創設されたわけです。保険制度の形をかりて国が農民に健康保険を
提供するという色彩が強かったものです。以来敗戦による国保崩壊を
経まして、1961年の新国保創設、国民皆保険の実現に至るわけなのです。
その歴史をまずはみなさんよく考えていただきたいたいと思います。
そして、既に国民皆保険以前の1950年には当時の大蔵省から国保への
融資の道がありまして、国保の運営は当初から国の財政的支援が
前提となっていた制度であります。
そして、今問題が2点あります。第１の問題は、国保の保険料、
保険税の収納率の低下をまず指します。それは桐生市におきましても
22年度予算で87.8％ということで、そのために今20億円もの滞納金が
発生しています。
第２の問題としまして国保の被保険者の構造の変化にあります。
1961年の国保の被保険者の職業は、農林水産業者が44.7％を
占めていました。それが2001年には5.2％へと減っています。そして、
農林水産業者にかわって首位に躍り出ているのは無職者です。
1961年のときに9.4％でしかなかったのですけれども、2001年には50.9％、
半分以上を占めています。これにも必然性があります。企業の正規社員
になった人は組合健保、公務員や教員になった人は共済組合の
被保険者になるので、農林水産業者が減った国保には結果として
自営業者と無職者の比重が高くならざるを得ないということなのです。
そして、1973年から1999年の17年間の収納率をみますと、その差は
2.3％の下落にしかすぎないわけです。それに対しまして、91年以降の
15年間では約４％の下落を示しています。これは、もうまさに異常なのです。
それは、いわゆる就職難と大規模なリストラのためというふうに
されています。片方で国保の被保険者に無職者の比率が高まり、
他方国保の収納率が急激に下落しているというので、国保というのは
経済が長期に低迷すると財政が一気に悪化するという構造になって
いるわけなのです。また、日本人の平均寿命が高まれば、それだけ
老人加入率が高まる構造となっています。組合健保や共済を卒業した
人々は、最終的にはすべての国保に加入してきます。そして、1961年に
国民皆保険がスタートした時点におきましても国保のほか
�〜塙膩鯤檗�
�∪�管健保、
�Ｆ�雇特例被保険者、
�ちグ�保険、
�ス餡噺�務員共済組合、
�γ亙�公務員等共済組合、
�Щ篶�学校教職員組合の７本の医療保険が並列したままであった
ということがいまだにその保険制度が一本化できないという原因に
なっていると考えます。そして、発足のこの時点で既に国保というのは
高齢者と低所得者の被保険者が多いという宿命を背負うことに
なっておりまして、そういう中で国民皆保険というのがスタート
したわけです。それを本当によく考えてもらわないと、国民皆保険
というものは理解できないと思います。
そして、こうした無保険者というのは国保が一手に引き受けることに
なりました。つまり国民皆保険というのは、国保が多くの高齢者と
低所得者を抱えることで実現したという制度であります。これを日本人は
忘れてはならないわけです。今アメリカでも国民皆保険等々をいろいろ
やっていますけれども、なかなかそれが実現できないというのは、
やっぱりそういうふうに国民性にありまして、日本人がいかに分かち
合いの精神を持っているかということの証明であります。他方、既存の
７つの被保険者はこれまでどおり比較的所得の高い現役の被用者保険が
維持されて、この時点で７つの被用者保険には既得権益が生まれた
のであり、国保の一本化に反対する理由が生まれたと考えています。
その７つの被保険者も組合健保などを卒業すれば、形式としては
国保に加入してくるにもかかわらずであります。
また、国保は国や都道府県からの支出で支えられております。
被保険者の保険料で賄うほかの被用者保険並みの保険料にするのは
不可能だと考えています。保険料の大幅な引き上げを行えば、
低所得者と高齢者には支払えるわけがありません。国保にこのことを
求めれば、国民皆保険というのは崩壊してしまうと考えています。
このままで国民皆保険というのは維持されるのでしょうか。収納率は
低下し続けています。資格証明書を発行されれば、国保に加入
していても医療費が全額自己負担となります。また、市と接触を
持たない未収納者はすでに国保から離脱しています。国民皆保険は
周りから崩れつつあります。しかし、だれもそれを正面から見ようとは
していません。現状を見る限り、時間をかけて確実にだれもが堅持を
叫ぶ中で行政側のこのような考え方、いわゆる国保は国保だけで
終了する、独立採算制でやるというような方針では今後国民皆保険が
崩壊し続けてしまう恐れがあるというふうに考えています。
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