はい! 河原井 始です。

最新の活動報告

 

2016年11月26日

誰がための

コンパクトシティ

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誰がためのコンパクトシティ

 視察の所感を下記の通り、述べさせて頂きます。

 

 コンパクトシティは都市の郊外化を抑制して市街地の広さを
狭くすることで、公共サービスの効率化や自動車交通の発生の
抑制をめざす、ということが一般的な定義となっています。
 コンパクトシティと似たような概念は昔からあります。
2001年に海藤清信先生が「コンパクトシティ」という本を
出されています。コンパクトシティと言うためには、市街地の
部分の密度を高めようというのが基本的な発想です。
コンパクトシティというと都市のど真ん中に非常に高密な
ところがあって、それ以外は全く人が住んでいないような
状況を発想しますが、そうではなく大きい中心も小さい中心
(生活中心)もあって、それから分散しているという発想です。
 その効果について述べてみます。
 まず交通効果として、自動車依存を減らせる、公共交通を
維持できる、エネルギー消費を削減できる、歩く機会が増える
ので、健康増進の効果がある、徒歩圏内で生活できるので
高齢化社会の対応にもなります。
 中心市街地における効果として、中心市街地の活性化
それによる地方税収の確保が挙げられます。その他の行政
費用削減効果、環境効果としては土地、空間資源の有効活用

による自然環境や農地の破壊などが減少し、低炭素化が

進むということがあります。
 そしてうまくいけばですが――「地域や住民の自治を促進する」
ことができるのではないかと考えられます。コンパクトシティを
実現していくときに、強制的な手法で進めていくことはできないので
住民のまちづくりへの参加を通じた対話によってのまちづくりと
なっていきます。そのことによって「地域や住民の自治を促進
できるのではないか、社会的な公正さが高まるのではないか、
ということです。
 これもうまくいけばの話ですが――地域の個性などを活かして
都市の魅力を高められるのではないかと考えられます。
市街地にも依りますが観光増進、投資の呼び込み、都市型産業の
形成、地域経済の活性化、そして定住性の向上、といった効果が
考えられます。
 しかし、もちろん懸念もあります。事業を進める中で住民が
自発的にコンパクトな拠点に移ってくれるのであれば特に問題は
ありませんが、そうでない場合、どの程度の公的な強制力が
許容されるのか?
 また、郊外の切り捨てにならないのか、中心市街地の利益誘導
ではないか、公共政策と住民の意向とが乖離しているのでは

ないかというところが問題になると考えます。
 今後コンパクト化を進めていくうえで重要なのは拠点よりも
むしろ拠点ではない部分をどうしていくかということだと考えます。
 現在はどちらかと言えば規模の経済性をうまく使った形での
制度になっていますが、今後都市が縮小するか、人口が減少する
ということになると、規模の経済性は薄れてきますからいままでと
同じであれば、逆行してしまうので、その事に対応していかなければ
ならないと考えます。いずれにしても強いリーダーシップが

求められるのはいうまでもありません。

 

○パネルディスカッション
 立地適正化計画制度について、ほとんど賛意がなかったのが
印象的でした。特に工学院大学の星教授は2013年まで

札幌市役所で都市計画の責任者の立場で現場で努めて

こられた方なので実感があり重みを感じました。
 星教授の意見――――立地適正化計画制度は百害あって

一利なしと言っています。都市計画法をいじらずに

都市再生特別措置法という法律の中でこの制度が

作られたためです。この計画は市街化区域の中に

都市機能誘導区域:住居誘導区域:住居調整区域を

設定するというものです。
 都市計画行政上は概ね10年以内に市街化しようと

言っているのに住居調整区域ですと言うのは、行政の立場では

非常に難しい、ねじれが生じてしまいます。それと外から内へ

誘導するということはますます難しいもので、現場の人は

市民からの問い詰めに対して多分答えることができない、

と答えていました。
 土地利用規制上はOKなのに、都市計画上はいいと

言っているのに「それは好ましくないです」と言わなければ

いけません。 もう一つの理由は、自治体が土地利用計画制度を

見直さない口実になり得るのではないかという点を心配しています。
 コンパクトシティはそれぞれの都市で目標像を立てる心配が
あります。まずは都市計画、特に土地利用計画制度をきちんと
運用すること、その適正化が重要であると考えています。
 まさに現場での体験から生まれる重みのある話であったので
勉強になりました。